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巨匠同士の競演というイヴェントが必ずしも良い結果ばかりをのこすわけではないという事実は衆目の認めるところであるが、このCDではそんな杞憂とはまったく無縁の格調高い高度にアポロ的な精神世界が実現している。
ベームの指揮はあくまでも骨太で雄大、端正な構築をしながら全体として厳格な質素さを忘れない高貴な精神性に満ちており、その緊張感は宗教的というよりは哲学的である。バックハウスのピアニズムは武骨でありながらごつごつしないソフトで温かみのあるスケール感が魅力。
こうしたふたつの悠久の大河の合流は、あたかもティグリス・ユーフラテス両大河が高度な文明を育んだ状況にも似て、現代に音楽という名のもとで、芸術という文化を一段と深化させるにふさわしい名演を生み出したのだ。
ブラームスの「ピアノ付交響曲」第二協奏曲と、モーツァルト最後のピアノ協奏曲というカップリングは、いずれの楽曲もあらたな時代の黎明を予感させている点において象徴的であり、魅力的でもある。(奈良与志雄)