| ヤフー経由でアマゾンを検索! |
|
Amazon.co.jp
経済学は歴史的に「倫理学」と「工学」の2つの起源を持ち、かつての偉大な経済学者たちはこの両方のアプローチを用いて理論を構築してきたが、近代経済学の発展とともに倫理的アプローチの重要性は大幅に低下した。そのため「現代経済学は大幅に力を失った」と著者は指摘する。そして「厚生経済学は倫理学に注意を払うことで豊かなものになりうる」「実証主義経済学も、厚生経済学的考察を取り入れることで助けられる」と提言している。このように本書では、経済学に倫理学の視点を導入し「道徳哲学としての経済学」を樹立する必要性を訴えており、著者の経済学に対する基本的な考えが示されているといえる。
多くの人は、「人間は自己利益最大化のために行動する」などの、経済学の単純化・モデル化のための前提を何の疑問もなく受け入れているであろう。しかし実はこの前提に「人はいかに生きるべきか」などといった倫理学的な観点が欠落しているために、経済学が限界に直面しているという著者の指摘には驚かされるに違いない。
本書は、大学で行われた特別講義をもとに著されていることもあり、専門的な数式はいっさい使われておらず、また全体的に平易な文章で記されている。さらに巻末に詳しい人名・用語解説も設けられているため、研究者や学生だけでなく、経済学の知識が多少でもあれば無理なく読めるようになっている。
著者の研究に関心を持っている人にはその入門書として好適であるのはもちろんであるが、そうでない人にとっても、経済学や経済事象についてあらためて考えさせられる機会を与えてくれるであろう。(戸田啓介)