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何気ないシチュエーションをドラマに変え、胸を突き刺すような切ない台詞で味付けする坂元裕二の物語世界と、髪の毛1本までを描き込みながらソフトフォーカスがかかったような非現実感を醸し出す陳淑芬+平凡の絵的世界がみごとに昇華。話によっては、背景を理解しがたいものや、いささかナイーブ過ぎると感じられるものもあるが、全編に「ほのあたたかい喪失感」とでも表現したくなる独特の空気がある。
言葉の壁を越えなければならなかったコラボレーションが充実していく過程をつぶさに見られるのも魅力の1つ。10編を順番に読んでいけば、最初は手探りだった2組のアーティストが、だんだんとお互いを理解し、相手の長所を認めつつ自身の世界も拡張していく様子が確かめられる。そういった意味で、10編目の「少女流浪、台湾に行く」(自殺したクラスメートが「死ぬ前に食べたい」と言っていた謎の食べ物を求めて台湾に旅立つ少女たちの物語)は、ある到達点と言える傑作に仕上がっている。
とりあえずページをめくっているだけでも、陳淑芬+平凡コンビのイラストは美しい。特に陳淑芬が描く少女の目は、「その眼差しの焦点がどこで結ばれているか」までが描きこまれており、印象的だ。(安川正吾)