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本書は章ごとに、留美子と彼女の向かいの家に住む会社社長・上原桂二郎の視点が交互に入れ替わって描かれている。「10年前のラブレター」をはじめ、それぞれの人生において交わされた「約束」がストーリーを膨らませ、やがて舞台は台湾にまで及ぶ。物語が進むにつれて、年齢も性別も異なる二人の日常が、「隣人」というだけではない接点を持ち始め、時に交差する。これら多くの場面転換や登場人物たちのなかば強引なまでの「縁」にも、違和感を覚えず読み進むことができるのは、いまや熟練の域に達した著者の筆致によるところであろう。
また、本書には「大人の趣」が随所に登場する。何十年もかけて育てる木のぬくもり、1時間じっくりとくゆらす葉巻、そして、旬の食材を使った高級日本料理の数々。温度や香り、味わいまでもが伝わってくるような巧みな描写が、物語に深みを加えているのは言うまでもない。(冷水修子)