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物語の舞台は19世紀中盤のパリ。1846年11月から天才音楽家ショパンの死まで、2月革命前後の約3年間に焦点が当てられる。パリの社交界を舞台に、ショパンと愛人のジョルジュ・サンド夫人との愛と確執や、ショパンと友人の画家ドラクロワという2人のロマン主義者の関係を中心に物語は進行していく。深刻な病に身をむしばまれながらも、故国ポーランドへの愛を抱き続けながら、芸術家としての道をまい進するショパン。一方、下院図書館の巨大な天井画を完成させ、画壇に確たる地位を築きあげていくドラクロワ。2人の芸術と人生への思いが、精密な心理描写によって活写されていく。
圧倒的な筆力と高度な方法意識によって紡がれる『葬送』は、長編小説を読むことの喜びを改めて感じさせられる作品である。ショパン臨終に向けての劇的な展開は、感動を超えて、ある種の崇高な感情を覚えさせられる。
年譜的事実を踏まえた歴史小説として、また、ショパンとドラクロワという2人の芸術家の交流と友情を描いた伝記小説として、ショパンとジョルジュ・サンドの関係を描いた恋愛小説として、19世紀中盤のパリの社交界を描いたサロン小説として、パリの都市風俗を活写した都市小説として、2月革命前後の時代状況を描いた政治小説として…。つまりは普遍的な「小説」として、『葬送』の作品性は傑出している。まさに、読まれるべき長編小説である。(榎本正樹)