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なかでも、やはり目を引くのは、数々の悪食の武勇伝。カメムシの幼虫や、カラスの「ろうそく焼き」、羊の血の腸詰など、本書には、想像を絶するメニューが多数紹介されている。中国では、20年ものの自家製蛇酒の、あまりのアクの強さにのたうち回り、韓国では「ホンオ・フェ」という発酵させたエイのアンモニア臭に涙する。その光景は、まさに著者の言葉どおり「不味さとの対決」といえる壮絶さである。しかし意外にも著者は、その不味さを、新しい食の発見として楽しんでいるから驚かされる。
本書で、怒りをもって「不味い!」と断罪されているのは、そうした珍料理に対してではなく、ビールやカレー、刺身にラーメンと、私たちが普段から食べ馴れている食品に関してだ。著者は、化学調味料を多用するデパートの惣菜に不快感を覚え、冷凍保存した白焼きを平気で出す鰻屋の「職人根性の欠如」を嘆く。そこから浮かんでくるのは、あまりにも歪んでしまった現代社会の食生活であり、それを平然と受け入れてしまっている私たちの心の貧しさなのである。(中島正敏)