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もっとも、著者が冒頭で指摘しているように、スローフード運動のことをファーストフードの不買運動かなにかと早合点してはいけない。それは、著者の言葉を借りれば「深遠な哲学を秘めたムーブメント」なのだ。人と人、人と自然の関係性の根底に食があるという思想を掲げ、スローフード協会は食にかかわる人々の間に共鳴者の輪を広げてきた。今では世界に6万人もの会員がいるという。
著者はそのネットワークのあちこちに顔を出し、ときには愉快な、ときには頑固な、食の職人や食の哲学者たちと語り、飲み、食べる。スローフードは単なる美食ではなく、また自然食運動というのともひと味違う。大事なのは人間と食のかかわりである。だから、著者は人間を描くのに相当な力を注いでいる。登場人物のせりふに軽快なリズム感がある。おしゃべりなイタリア人がそこにいるようである。(松本泰樹)