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「景気がいいのにも困りものだ。いったい企業は、これでもかと仕事を増やして人を雇い入れているのではないか。そのせいで就労に関しての質は従来よりもずいぶんと水準が低くなった」
本当に水準が低くなったのか、それとも世界の中で1990年代の経済をひとり勝ちしたアメリカの企業における激しい競争が、より高い要求を自らに課すことで、普通のことすら怠惰に映るようになってしまったのか、それはどうかわからない。でも、ここで言っているのは確かに「ついて来られないヤツは哀れだ」ということであり、「アメリカはいつからこんなことになったのか」というため息交じりの問いでもある。
競争が先鋭化されればされるほど、その中で採択されるビジネスモデルは均一化の方向へ進む。どの企業でも結果的には似たようなストラテジーをとるようになり、そこで働く者もまた、ごく細いレールの上を懸命に駆け抜ける。そしてレールにモノが落ちていてつまずいたりすると「誰だ、ここにこんなモノを置いたヤツは!」とののしり叫ぶのだ。よけるという選択肢もあるはずなのだが、必死に走っているので、そんな余裕さえない。
社会ダーウィン主義のように、最後には勝者の方法論しか認められず、それが次のスタンダードとして生き残りながら社会を席巻してゆく。その動きを世界にまで押し進めたものが「グローバル・スタンダード」と呼ばれているものの正体だが、その「水準」の犠牲者を最も多く生む国もまた、アメリカではないだろうか。(駒沢敏器)